dolcetto o scherzetto











 大胆なウェーブのかかった腰まで波打つ銀髪が、冷たいほどの美貌をたたえた横顔を柔らかく包み込んでいる。裾の長い深紅のドレスはその華奢な身体を魅力的に彩り、丹念に施された化粧は煌めくような緑瞳や白亜の肌を強調していた。
「これにヤギの手袋と、それから首元にカシミヤのショールをつければ完成だ」
 ショールで肩まで覆えば女らしい丸みも演出できるしな、さも当然のように述べるリボーンに、綱吉は呆然と目の前の女性、いや、女性の服を纏った自身の右腕、獄寺の姿を見つめた。
 「こんなことまでさせられるとは思いませんでした……」
 「どんなことをしてもツナについていく、と言い張ったのはおまえだろ?」
 今日のパーティーは女性同伴、護衛は連れていけねえからな。
 溜息と共に呟かれた獄寺の言葉に、リボーンは鼻で笑って返す。
 「獄寺君……すごく綺麗だよ」
 「……すみません。いくら十代目のお言葉でも、素直に喜べません」
 綱吉の言葉に、獄寺は力なく笑う。本当に綺麗だ、と呟く綱吉の頭をリボーンが叩いた。
 「当たり前だろ。誰がこいつに化粧したと思ってんだ」
 「……誰?」
 「俺だ」
 「……………」
 ちなみにドレスはヴェルサーチの特注だぞ、綱吉の無言の視線にリボーンはそう付け足す。綱吉はため息を吐いた。
 「じゃあ、俺も支度してくるから」
 また後でね、綱吉はひらひらと手を振りながら部屋を後にする。綱吉に促されるようにして歩みを進めたリボーンは、ふと立ち止まり、「山本、」先ほどから部屋の隅のソファーに座ってこちらを眺めていた男に呼びかけた。
 「……ドレスは汚すなよ?」
 にやり、と不敵な笑みを残し、最強を謳われるヒットマンは踵を返して出て行った。後にはドレスに身を包んだ獄寺と、山本だけが残される。
 「……獄寺、」
 甘い声で呼ばれ、獄寺はゆっくりと振り返る。そうしてソファーに腰を下ろしたまま腕を伸ばす山本の姿を目にして唇を歪めた。獄寺は無言のまま山本に近づくと、ハイヒールに包まれた足を持ち上げ、山本の股に触れた。
 「興奮してる」
 獄寺は暗く笑う。山本は獄寺の足首を掴んで引き寄せると、深紅のドレスを太腿までめくり上げた。ガーターで止められた網タイツが露わになる。
 「獄寺ぁ、……やべえよ、お前」
 すげえエロい、山本は掠れた声で呟いた。
 「お前にこんな趣味があるなんて、知らなかったな」
 「……ドレスを汚したら小僧に殺されるな」
 山本は獄寺の足首に軽いキスを落とすと、そのまま舌を添わせた。ふくらはぎから膝頭を伝い、太腿にたどり着くと口でガーターのリボンを外す。そうして露出した素肌に、山本は音を立てて吸いついた。普段光に晒されることのない太腿は白く透きとおり、キスと共に落とされた赤い所有印を色鮮やかに浮かび上がらせる。それを目にして満足げに微笑むと、山本は赤い痕を何度も舌で愛撫した。
 「っ、……ん、……っぁ、……、」
 ぞくぞくと這いあがってくる寒気にも似た快感に、獄寺は唇を噛みしめた。ドレスと同じ色に彩られた獄寺の唇は、その肌の白さを際立たせる。
 「獄寺、」
 山本は獄寺の足から唇を上げると、ソファーにゆったりと寄り掛かる。そうしておいで、と誘うようにゆっくりと腕を持ち上げ不敵に笑って見せた。
 「お前だって小僧は恐いだろ?」
 協力してくれよ、山本のセリフとその瞳に渦巻く欲望に気づき、獄寺はにっと紅の唇を歪ませた。そして、ドレスの裾をゆっくりと持ち上げ、山本の腕に自身の腕を重ねた。







2009.11.01 全国大会R11
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