屈曲
「今誰のこと考えてる?」
閉め切ったカーテンに光は遮られ、外を照らす僅かな街頭の光さえ入ってくることはない。暗闇が部屋を満たしている。でも、それでよかったのかもしれない。
漆黒が獄寺の痴態を覆い隠してくれていたのだから。
獄寺が普段来ている高級そうなスーツの上下は床に投げ出され、その上に獄寺が座っているせいですっかり皺になってしまっている。獄寺の透けるような素肌をかろうじて隠している薄い白のシャツは、彼の体にいくつも走る無数の傷を浮かび上がらせ、艶めかしく彩っているように見えた。
「なぁ、誰のこと考えているんだ?」
自分はベットに腰掛け、獄寺に自らのモノを奉仕させながら、山本は執拗にそう問いかける。
獄寺は問いかけには答えず、山本のモノに舌を這わせ、昂ぶる熱を冷まさせようと懸命に扱いていた。山本の全てを口に含み、むせかえるような雄の匂いに嫌悪感と期待に満ちた興奮を募らせていく。獄寺自身のものも、何もされていないにもかかわらずたってしまっている。時折つう、とそこから先走りの蜜がこぼれ落ちた。
山本はそれを見るとうっすらと唇の端を持ち上げる。その笑みを微かに伺い見てしまった獄寺はその異様な恐ろしさに背中をぴくりと震わせた。
山本の表情はいつも通りの平静を装ったかのような落ち着いたそれにも見えなくはない。だが、その瞳の奥には狂気にも似た欲望の光がちろちろと姿を見せ、得体のしれない雰囲気を醸し出していた。
「もういい」
山本は彼のモノを奉仕する獄寺の頬を愛おしむように撫でると、その手をゆっくりと首の方へと持っていく。そのまま、片手で首を絞めるかのように掴むと獄寺の頭を山本自身から引きはがし手を離した。
獄寺は急に首を絞められた苦しさから体を前倒しにして咳き込む。彼の喉から漏れる空気を求めるヒュウヒュウという音が痛ましかった。
「苦しかったか?」
どこか愉悦を含んだ声で山本は床にうずくまる獄寺にそう問いかける。
獄寺はまだ荒い息を何とか整えるときっ、と上を向き、ベットに座っている山本を睨みつけた。
「当たりめぇだろ! お前一体何考えて」
「お前は何を考えてるんだ?」
獄寺が言い切る前に山本がそう問い返す。獄寺は少し戸惑ったような表情をすると俯いて「別になんも考えてねぇよ」とぶっきらぼうに言い放った。
「嘘だな」
山本は嗤う。そして床にへたり込んでいた獄寺の腕を掴むと引っ張り上げ、自分の上に向かい合う形で座らせる。
獄寺の太股に山本のものが当たり、獄寺は微かに顔を赤らめた。
窓を閉め切っているせいか部屋の空気は少し淀んでいる。何年も共に戦い続けた男の顔は今まで相対したどの敵にも見せたことがないような凄みと崩れてしまいそうな危うさが混じって獄寺の胸を締め付けた。
山本はそっと獄寺の後孔へと腕を伸ばすとその表面へと指を這わせる。
「っひっ、あ……っ」
獄寺は突然の感触に小さな悲鳴を漏らした。
山本はそのまま容赦することなく獄寺の後肛へと指を沈めていく。
「くあああっ。んんっ」
絶え間ない異物感と痛み、そして微かに感じる甘い熱に耐えようと獄寺は必死に目を閉じる。
山本は獄寺の耳に唇を寄せると「ずいぶん慣れたよなぁ」と囁いた。
「昼間はアイツに永遠の忠誠を唄うこの唇で、夜にはこんな甘い声をあげているなんてアイツが知ったらどうなるんだろうな」
「ば、かやろ……っ」
獄寺は怒りを滲ませた目で山本を睨みつけようとするが、その瞳は潤み、怒りさえ甘い快楽に流されて、その表情を淫らに飾る道具の一つに成り果てている。
山本は、獄寺の目の端にたまる涙をぺろりと舐め上げると「こんな表情を知っているのは俺だけだろ?」と言い後肛を探る指の動きを激しくさせる。
「ふあっ、──や、まもとぉっ」
獄寺が苦しげに山本の腕を掴んだ。必死になっていたせいか予想外にその力は強く、山本の腕には紅い痕が浮かぶ。
山本は獄寺の後肛から指を引き抜くと、うっとりとしながら獄寺の腕をとり、その手の甲へとキスを落とした。
「昼のお前はアイツのものだ。……でも、夜のお前は……俺のものでいてくれ……」
山本の喉から絞り出したような苦しげな声に獄寺は小さく「馬鹿野郎」と悪態をつく。
山本はその声には気付かないふりをして彼の体を押し倒した。
獣の饗宴はまだ続いている。
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【alioli】のケイさまからいただきました、山獄小説ですv
そしてヤンデレです!エロです!!
大事なことなのでもう一度言います。ヤンデレです!エロです!!・・・ケイ様さいこーっ。
押し倒されながら悪態を吐く獄寺くんがたまらん!
加害者のはずなのに酷く苦しそうな山本がたまらん!
ほんと、ケイ様のお書きになる小説はいつも乙女のハートを鷲掴みにするので、いい意味で心臓に悪いです・・・このハート泥棒☆
本当に、素敵な小説をありがとうございましたv
次はヒバ獄あたりをお願いします(←おい!)