長々し夜を















身体には複数の穴が開いている(例えば、鼻や耳の穴、口などだ)が、その空洞の何処からが自己と言えるのだろうか?
内側の空間は、自己か否か。入り口から全て己と見なすべきか。

例えば、食物は口から入り、雑把に言うと、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸・直腸を経て、その間に消化され、体内に吸収されて、残骸が肛門から出る。
吸収されるという事は、体内に取り込んだ食物は残骸として、体外に排出されるまでずっと自己では無いと言える。
もっと言えば、空気なんてものは、いつもこちらの事などお構い無しにいたる所から勝手に体内に出入りしている異物だ(勿論、自発呼吸や皮膚呼吸の為であるが)。
つまり、いつも空気や食物などという確実に自己では無いモノが侵食している空間は、自己と言えるのだろうか?

そもそも、受精卵が細胞分裂し、内部が液体で満たされ卵割腔が生じる。
胞胚表面の細胞層が内部に入り込む(陥入する)。
その口を原口と言う。また、その空間を原腸と言う。これが消化器官となる。
脊椎動物は、原口が肛門となる、後口動物である。
専門的なことは置いておいて、まあ、言いたい事は、内臓の壁面は自己だと考えられると言う事である。

体液(唾液等の消化液、内臓から分泌される粘液など)は、己の体内から排出されたものと考えると、自己では無い。ただ人体の役には立っているが。

内臓の壁面(自己)に囲まれた空間を通る空気・食物は異物であり、内臓の壁面(自己)から空間に排出される体液も異物である。
以上のことから、身体の空洞は自己と接触する、ただの異物の通り道に過ぎない。つまり、自己ではないと判断する。

こんな下らない事を延々と考えているのは、一夜限りの遊び相手が飽きもせず、俺の上で腰を振っているからだが。

安宿のベッドの軋む音や俺に跨る男の荒い息遣い、下肢から聞こえる粘着質な音、隣部屋から響く女の嬌声。いい加減、聞き飽きた。
今夜の相手に選んだ男も一人で勝手に盛り上がってくれて、こっちは気持ち良くねぇんだよ。とんだ期待外れだった。
やっぱ、男とヤんのも下らねぇな。暇潰しにもなりゃしねぇ。
でも、女だと後々、面倒だしなぁとぼんやり考える。一夜限りだと言ったのに、しつこく言い寄ってくるのが目に浮かぶ。
ジョットが帰ってくる前までに、始末がつかない気がする。と言うか、面倒は御免だ。
こんな事を考えてる間にも、男がイきそうだ。マズい。中に出されたら、これから帰るのにそれこそ面倒だ。

今までずっと瞑っていた瞳をぱちっと開ける。男の阿呆面が目に飛び込んできた。あー、目の毒だ。
そんな俺に構わず、男は脂ぎった顔を近付けて来る。最悪だ。
俺はそんな事の為に、目を開けた訳じゃねぇんだよっと、投げ出していた右足で、男の腹を蹴り上げた。
その瞬間、肛門から男のモノがずるっと音を立てて抜け出るのと同時に果てやがった。
ぐえっと蛙が潰れた様な声が聞こえるが、知った事ではない。
それよりも、微妙に中に出されて、内壁を伝う感触がする。気持ちが悪い。
先に抜いときゃよかった。これは失敗したなと思い、溜め息を吐きつつ、横になっていたベッドから起き上がる。
ぐしゃぐしゃになった髪をお座成りに左手で掻き上げ、そこら辺に脱ぎ散らかした服から煙草を探す。
その間にも、ベッドから転がり落ちたままの男が何かしら喚いているが、生憎、お前にもう用は無い。
これじゃ、煙草もゆっくり吸えやしねぇ。喚いてる男の髪を鷲掴み、ずるずるとドアまで引き摺る。
逆の手でドアを乱暴に開き、男をぺいっと投げ棄て、すぐさまドアを閉める。
これでゆっくりと煙草が吸えると思いきや、ドアをドンドンと叩き、まだ男が喚くが、これ以上は相手をするつもりは毛頭無い。
沈めないだけ有り難く思え。今夜は失敗ばかりだと思いつつ、色んなモノで汚れてるシーツを取っ払い、ベッドに腰をおろす。
先程、探し当てた煙草を口に咥え、火を点けた。
吐き出した煙を視線で追いながら、退屈で死ねるなんて、ジョットが居れば知らなくて済んだものを、と独り言ちた。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

私 的G様イメージです。かなり世話が焼けるジョット様が日本に遊びに行ってらっしゃるので、俺も久々に遊ぶかというG様です。このあとジョット様が雨月を連 れて帰ってくるので、忙しくなります。自分の範囲の話は、誰とヤっても自分は侵されないと考えるG様の自己解釈です。幼い頃から必要に迫られて他人と寝て いて、そうして身体を重ねた奴らはGのことを自分のモノのように扱う。だけど、じぶんは自分のモノで、誰にも支配されないという思いから、体内は自分では ない=支配されていないという考えに至っております。

カツキ



+++++++++++

カツキ様からいただきました、G話です♪
ここ最近、アニリボG様のカッコよさに心臓射抜かれて出血多量な日々を送っていた私、カツキ様のお書きになるG様に再び心臓射抜かれました。どうしよう、本気で果たされそう、でも本望です!!

さらりと知的な文体が冷静なG様の内面と重なってぐぐっとひきこまれました。
いやぁ、やっぱり頭の良い方の書く文章は違いますね(笑)
尊敬します!

素敵なG様をありがとうございましたv


りんこ


2010.6.6