穏やかな昼下がり、校庭には明るい声が満ちていた。
 乾いた風が時折カーテンを揺らし、応接室に差し込む陽はその度に姿を変える。
 「・・・・っ」
 室内にいた一人の青年が、口を開き、何事かを呟いた。いや、呟こうとした。だが青年の声は、その口に巻かれた布によって押し殺される。青年のくぐもった声を聞いて、青年を背後から抱え上げるように抱きしめていた青年が薄い笑みを浮かべた。
 「ずいぶんと不満そうだね」
 獄寺隼人、と雲雀は青年の耳元に囁く。耳をぞわりと舐められ、その刺激から逃れようと獄寺は身を捩ったが、両手を背後で拘束され、後ろから抱え上げられた不安定な状態でそれは叶わなかった。上着を脱がされ、シャツだけを纏った――もっともシャツは破かれてしまっていて、ほとんどその意味をなしていない――状態で拘束されている獄寺の胸元を背後から弄りながら、雲雀は獄寺の耳を攻める。ぎゅっと目を閉じその刺激に耐えようとする獄寺の表情を愉しみながら、雲雀は胸元を弄っていた手を、ゆっくりと下へと下ろしていった。そして、すでに緩められていたズボンを乱暴に剥ぎ取ると、獄寺の下半身を晒す。すらりとした白い足が白昼の光に照らし出される様には、一種退廃的な艶めかしさがあった。
 雲雀は外気に晒された獄寺自身を、乱暴に握り締める。途端に獄寺の口から、くぐもった喘ぎが漏れた。獄寺が抵抗するように身を揺すると、その腕を拘束するネクタイ――それは獄寺のものだった――がぎゅっと耳障りな音を上げる。
 「ん、・・・んん、ぐっ」
 雲雀の指がまるで楽器でも奏でるかのように、獄寺の中心を責め立てた。指をばらばらに動かし、根本から何度か梳くと、獄寺は小刻みに身体を震わせる。獄寺がゆるゆると首を振ると、清らかな月の光を思わせる銀髪が、ぱさり、と雲雀の鼻筋を打った。
 「く・・・ん、んんっ」
 先端を刺激すると、獄寺はしなやかな背を仰け反らせ、達した。
 「ちょっと君、早いんじゃない?」
 雲雀はくすり、と小さく笑った。そして、ぐったりと力の抜けた身体に腕を回し、腰を固定すると、後ろに息づく秘所に指を沿わせる。ぴくり、と獄寺の身体が強ばった。入り口を確認するよう、指の先で何度か周辺を彷徨ってから、雲雀は勢いよく指を挿入させた。
 「ふぅ・・・ぐ、・・・っん・・・・」
 獄寺の吐き出した蜜を潤滑油とし、雲雀の指は獄寺の内部を縦横無尽に動き回る。雲雀が指を動かす度にぐちゅり、と生々しい音が漏れ、獄寺の羞恥心を煽った。
 「熱いね。興奮してるの?」
 獄寺の中の指を二本に増やしながら、雲雀は獄寺の顔を覗き見た。羞恥に染まった獄寺の頬はなんとも甘美で、苦しげに歪められた顔は雲雀の欲を煽った。三本目の指を挿入して乱暴に内部を蹂躙すれば、獄寺の顔に浮かぶ苦悩の表情が深まり、雲雀は暗い悦びに唇を舐めた。
 「んん、・・・・・・ふ、っ・・」
 後孔から指を引き抜くと、雲雀は手早くズボンの前をくつろげる。そして獄寺の息が整うのも待たずに、堅くそそり立った自身を一気に打ち込んだ。
 「っっん・・―――・・・・」
 びくり、と獄寺の身体が大きく跳ねる。反り返されて晒された獄寺の首筋に唇を寄せながら、雲雀は腰を激しく突き動かした。狭い内部を引き裂かれる痛みに、獄寺の口から、くぐもった悲鳴が漏れる。
 「なあ、雲雀」
 突然、それまで少し離れた場からソファーの上で絡み合う二人を眺めていた青年が、口を開いた。雲雀は声の主にちらりと視線を向けると、片眉を上げて獄寺の首筋に強く吸い付いた。そうすれば、青年が怒ると言うことを分かっていての行動だ。案の定、青年、山本は不機嫌そうに顔を顰めて、雲雀を睨み付ける。
 「あんまり激しくするなよ。壊れる」
 雲雀は山本の言葉を聞いているのかいないのか、にやりと笑みを浮かべたまま、腰の動きを早めた。山本は小さく溜息を吐くと、手の中で弄んでいたライターに視線を落とす。獄寺から奪い取ったそれは、確かな重みを持って山本の手中に存在していた。もう一度溜息を吐いてから、山本は視線をライターから、苦痛に歪んだ獄寺の顔へと移した。好き勝手に身体を蹂躙されている獄寺は、ただ苦痛と屈辱に眉を寄せている。その表情は酷く悩ましげだ。山本は獄寺に向かい合う位置に配置されたソファーの背に寄りかかり、その肢体をじっとりと眺めた。
 「んんっ!・・・んっ、」
 雲雀は、ソファーからだらりと投げ出されていた獄寺の足を背後から掬い上げ、股を開かせた。前から見つめる山本に全てを晒す格好になり、獄寺は顔を真っ赤にしてその手から逃れようとしたが、自身の体重により深まった結合に、短く息を呑むと身体を震わせた。獄寺の様子を楽しむようにして、雲雀は首筋に沿わせていた唇を、多くの傷痕が残る背中へと移動させた。それは度重なる戦いにより、彼がその身に負ったものだった。雲雀が傷痕を舐め上げると、獄寺はひゅっと息を呑む。傷痕に口付けながら、雲雀はそっとささやいた。
 「好きなんでしょ?こういうのが」
 「んん、っ・・・・・・・っん、ぅ」
 そうささやくと同時に雲雀が強く腰を突き上げると、獄寺は激しく首を振りたぐった。
 雲雀は暫く自分勝手に快楽を求めて腰を動かしていたが、小さく呻くと獄寺の中に熱い欲を放った。獄寺の足を解放し、ずるり、と雲雀が雄を取り出すと、たった今自身が放った欲が獄寺の足をゆっくりと伝わり落ち、ソファーへ染みを作る。その様に暴力的な欲望が育っていくのを感じ、雲雀は膝の上に乗せていた獄寺の身体を乱暴にソファーから蹴り落とした。力の抜けた獄寺は、自身の身体を支えることも出来ずに、されるがまま床に倒れ込む。その際床に身体を強く打ち、獄寺は小さく呻いた。
 「まだ終わりじゃないよ」
 「ん、っ――」
 倒れ込んだ獄寺の背後に回ると、雲雀はその細腰を掴み、膝を立たせた。獄寺はその手から逃れようと藻掻いたが、未だ自由にならない手と、乱暴に扱われた身体ではたいした抵抗も出来ず、雲雀によってすぐ腰を固定されてしまう。それでもなお逃れようと身を捩る獄寺を、雲雀は自身で一気に貫いた。びくり、と獄寺の身体が撓る。後ろを激しく犯しながら、雲雀は片手で緩く立ち上がった獄寺の花芯を掴み、乾いた笑い声を上げた。
 「随分と愉しんでるみたいだね」
 刺激の足りないそこは、先端から絶えず涙を流し、最後の刺激を待ちわびて悲鳴を上げていた。雲雀は獄寺の快楽を引き出す点をあえて避け、いつまでも訪れない長く怠惰な快楽に、獄寺はエメラルドに透き通った瞳から涙を流す。さらに残酷なことに、雲雀はその長い指で獄寺の花芯の根本を戒めてしまった。口に出せぬ代わりに全身でその行為を止めさせようと躍起になる獄寺に、雲雀は優しく――もしくは、あたかも優しく――声を掛けた。
 「ねえ、結構辛いんでしょ?いい加減、素直になれば?」
 雲雀はほくそ笑み、口を開く。
 「あの時みたいに、さ」
 「っ!!」
 獄寺の身体が強ばった。さっと顔を青ざめると、見開いた瞳を動かす。そして、自身を見つめ続ける山本の冷たい視線とぶつかると、微かに身体を震わせた。
 獄寺の様子に満足げに笑うと、雲雀は花芯を戒めたまま獄寺への攻めを強めた。
 「あの時くらい素直だったら、少しは優しくしてあげてもいいよ?」
 「くん、ぐ・・ぅ・・・・っ」
 ぐっと雲雀が腰を進めると、獄寺は首を弱々しく振りながら涙を流した。
 「ねえ、隼人・・・」
 ちらり、とソファーに腰を下ろす山本に視線を向けながら、雲雀は笑った。獄寺は顔を伏せ、山本の視線から逃れようとしたが、それまで座っていた山本が立ち上がる気配を感じると、びくりと身を竦ませた。
 山本はゆっくりと床の上で絡み合う二人に近づくと、床に伏せてしまった獄寺の顎を、爪先で持ち上げた。怯えた獄寺の瞳が、山本を見つめ、固まる。山本は、笑っていた。
 「獄寺、」
 山本は愉快そうに口元を歪め、笑っていた。だが獄寺は、そんな山本に恐怖を覚えずにはいられなかった。山本は座り込み、涙で濡れた獄寺の顔を両手で持ち上げると、頭をそっと撫でる。そして、口を塞いでいた布の結び目を片手で器用に解くと、それを取り去った。獄寺は山本に目線を合わそうとせず、細かに身体を震わせる。そんな獄寺の頬を優しく愛撫しながら、山本は口を開いた。
 「雲雀が言ったこと、本当?」
 「・・・・・っあ、!」
 山本が問いかけるのに合わせるようにして背後の雲雀が腰を突き上げると、獄寺は思わず高い声を上げた。
 「雲雀に脚、開いたんだな?」
 「そ、んな・・・・んぁあ・・・ぁ」 
 「抱いてくれる奴なら、誰でも良かった?」
 「違っ・・・・あぁ、あっ・・・・」
 獄寺が答えようと口を開くたび、雲雀が悪戯に突き上げてきて、獄寺は切ない声で鳴く。山本は暫く獄寺の表情を眺めていたが、急にズボンの前をくつろげると、自身を取り出し、それを片手で固定した獄寺の口元へつきだした。すでに立ち上がり掛けたそれを突きつけられて顔を背けようとした獄寺の首筋に、山本は微笑みながらライターを近づけた。かちり、と冷たい音と共に炎が生じ、揺れた獄寺の銀髪の先がちりり、と焦げる。首筋に感じる熱に獄寺は抵抗を止めると、涙に潤んだ瞳で山本を見上げる。その獄寺の口に、山本は自身をねじ込んだ。
 「う・・・く、ん・・・・ふぁ、ぁ」
 どくりと脈打つ熱い肉棒で喉を突かれ、獄寺は噎せて苦しげに顔を歪めた。山本はさらりと揺れる獄寺の銀髪を少々乱暴に掴むと、獄寺の口を自身で犯した。初めはまだ口に入りきれる大きさだった山本の雄は、だんだんと質量を増していき、そのあまりの大きさに獄寺は息もろくに出来なかった。飲みきれなかった唾液が、口の端から溢れる。
 獄寺の口内で欲望を十分に膨らめると、山本は無言のままにそれを獄寺の口から抜き出した。途端に入り込んだ酸素に噎せる獄寺にちらりと一瞥を投げてから、山本は未だ獄寺の中心を戒め、緩い刺激を与え続けている雲雀に目を向けた。
 「そろそろいかせてやれば?」
 「この子が上手におねだりできたらね」
 にやりと質の悪い笑みを浮かべる雲雀に、山本は片眉だけをあげて肯定の意を表した。その意を受け取った雲雀は、今度は的確に獄寺の快楽を引き出す点を刺激し始める。
 「ぁあっ・・・・ぁ、・・・・・っ」
 目から火花が散るほどの快楽。だが、花芯は戒められたままで、行き場を失った快楽が身を蝕む感覚に、獄寺は鋭い悲鳴を上げた。
 「ぁ・・・や、めろ・・・・っ」
 「違うだろ、獄寺。お前、おねだりの仕方もわからないのな」
 「や、め・・・、ま・・も、と――ん、ぁあ、」
 「素直になりなよ。――かみ殺したくなるじゃない」
 左の耳を山本の吐息が愛撫し、右の耳に雲雀が軽く歯を立てる。頭の中がどろりととろけ、獄寺は涙を流しながら喘いだ。山本の指が悪戯に立ち上がって存在を主張する胸元の飾りをつくと、新たに流し込められた刺激に、獄寺は耐えきれないとでも言うように身を捩った。山本は獄寺の顔を手で固定し、その表情を覗き込んだ。
 「獄寺・・・お前が俺以外の男にどう媚びるのか、見せてくれよ」
 「僕に、媚びてみなよ――獄寺隼人」
 「あぁ、・・・ぁぁ、・・っん・・・・くぁ」
 悪魔のようなささやきに、獄寺は唇を戦慄かせ、目の前の山本に助けを求めた。だが、縋るような獄寺の視線を、山本は冷たく無視する。絶望に獄寺は涙を滲ませると、震える唇を薄く開いた。
 「お、願い、・・だ・・・ひ、ばり――・・・・・」
 いかせて、と、その唇が戦慄く。
 羞恥と屈辱、そして紛れもない快楽に染まった獄寺の瞳が、雲雀を仰ぐ。暗い悦びに、雲雀は唇を舐めて薄く笑った。
 「いいよ。望み通り、いかせてあげる」
 「ん、・・・ぁ、あ、あ、・・・・―――っ」
 そう言うと、雲雀は獄寺の花芯を戒めていた指を外し、自身で深く獄寺の秘肉を突いた。やっと与えられた刺激に、獄寺はびくりと身を震わせると、蜜を滴らせる。きつい締め付けに、雲雀も獄寺の内部で熱を弾けさせた。
 雲雀が自身を内部から引き抜くと、それまで雲雀の手によって支えられていた獄寺の腰が、がくりと床に沈んだ。日に当たらない白い尻には、強く掴まれていたために赤い手の跡がはっきりと残っていた。雲雀は立ち上がり、手早く服を整えてしまうと、無言のままの山本ににやりと唇を歪めてから、先ほどまで山本が座っていたソファーに腰を下ろした。
 投げ出した足を時折細かく痙攣させる獄寺を、山本は冷たい瞳で見下ろしていた。山本が獄寺の腰を掴み、伏せていた身体を反転させると、涙に彩られた獄寺の瞳が山本を映した。
 「泣くなって」
 山本はいつもと変わらぬ明るい口調でそう言うと、獄寺の頭に手を回して、濃厚な口付けを仕掛けた。驚きに緩んだ獄寺の歯列を簡単に割り、恐怖に縮こまった舌を絡め取ってきつく吸う。
 「ふ、ん・・・ぁ」
 口付けの合間に、獄寺の口から濡れた声が漏れる。山本の肉厚な舌に舌の裏をぞろりと舐め上げられ、ひくりと獄寺の喉が鳴った。口付けながら、山本は獄寺の手首を拘束するネクタイを解き、獄寺の両手を自由にした。だがもうすでに、獄寺に抵抗する気はなくなっていた。自由になった両腕は長い間の拘束にじんじんと痺れ、獄寺はそれを床に投げ出したまま、息も出来ぬほど深い口付けに、苦しげに瞳を細めた。
 「・・・・っぐ、ごほ、・・・はぁ、は、ぁ・・・」
 ようやく山本が唇を解放してやると、獄寺は酸素を求めて唇を薄く開いた。唾液に彩られた獄寺の唇の合間からは、赤い舌が覗いている。口の横に溢れた唾液を舌で舐め取りながら、山本は獄寺の瞳を見つめた。
 「俺にとって、お前は唯一の存在だったのな」
 「はぁ・・・・・、っは、・・・」
 「けど、お前にとっての俺は、そうじゃなかったみたいだな」
 山本の言葉に、獄寺は目を見開き、唇を震わせた。
 「なあ、お前にとって、俺って何番目の“男”?」
 「や、まも・・・とっ――俺、は・・・」
 獄寺の言葉を遮るようにして、山本は朗らかに声を上げて笑った。そっと優しく、山本の手が獄寺の頬を撫で上げる。だが、獄寺の瞳から恐怖の色が消えることはなかった。
 「さっき、獄寺が雲雀に挿れられていった時の表情――」
 「や、めろ・・・黙れ、・・や、まも・・・と・・」
 「ぞくぞくした」
 「ひぃっ――・・・」
 獄寺の耳元にささやきながら、山本は獄寺自身を握りしめた。達したばかりの敏感なそこを掴まれ、獄寺の身体が大きく跳ねる。
 山本はすぐ花芯から手を外すと、投げ出された獄寺の足を掴み、大きく開かせた。
 「や、っ・・・やめ、」
 先ほどまで男をくわえ込んでいた獄寺の蕾はひくひくと煽動し、白い蜜を溢れさせる。山本の視線からそこを隠そうと伸ばされた獄寺の両手首を片手で掴んでしまうと、山本は獄寺の腰を引き寄せ、自分の上に座らせるような形で獄寺の中に堅くそそり立った欲を挿入させた。
 「ひ・・―――っ・・・」
 自分の体重も手伝って一気に奥まで貫かれ、獄寺の口から声になりきれない悲鳴が上がる。涙を流して悶える獄寺の顔を眺めながら、山本は腰を突き動かした。途端に甘い声で鳴く獄寺の声に欲を煽られるようにして、山本は激しく腰を動かす。縋るものを求めて彷徨っていた獄寺の腕は、山本の首に回された。山本は激しい突きを繰り返しながら、背中に手を当て獄寺を引き寄せ、胸の飾りを口で愛撫した。新たな刺激に、獄寺は快楽に顔を歪ませた。山本が獄寺の胸の飾りを舌でこね回し、強く吸ってから軽く噛むと、きゅっと蕾が山本を締め付ける力が強まる。上と下とを同時に責め立てられ、獄寺は高い艶声を上げて達した。山本も獄寺の中に、熱い欲望を解き放つ。
 「あ、・・・ぁ、ふ・・・・ん」
 びくん、びくんと腰を震わせ、獄寺は山本の吐き出した欲を受け止めた。ふっと意識を手放し掛けた獄寺の花芯を、山本はまたもやきつく握りしめた。その痛みに目を見開いた獄寺は、自身を見つめる山本の冷たい視線に気付いて凍り付く。口元には笑みが浮かんでいるが、しかし、山本の瞳は決して穏やかなものではなかった。獄寺は怯え、口を開き掛けたところで下からのきつい突き上げにあって涙を流す。
 「ぁあっ・・・や・・まも・・・、ご、ごめ・・・も、う、・・・っん」
 「獄寺――どうして謝るんだ?俺、別に怒ってなんかないよ」
 そう言いながら、山本は激しく獄寺を突き上げた。獄寺はがくがくと身体を揺さぶられ、嫌だとでも言うように首を振る。
 「愛してる」
 悲愴な色を帯びる獄寺の声に、穏やかともいえる山本の声が重なった。
 「愛してるんだ・・・獄寺」
 「いや、・・・だっ、やまも・・と・・・・・ぁっ――」
 獄寺を激しく抱きながら、山本は考えた。

 そう、怒りは感じていない。
 ただ、どうしたらいいか、わからないだけ――

 胸に溢れる想いを留めるように、山本は獄寺の髪を掴んで引き寄せると、深く口づけた。口付けは、涙の味がした。









 雲雀はソファーの背により掛かったまま、二人の様子をじっと眺めていた。
 愛することを恐れる青年と、愛することを知らない青年が、互いに傷付けあいながら求め合う様は、雲雀を満足させた。
 (少なくとも、暇つぶしくらいにはなるかな)
 この後の展開に溢れる笑みを押さえきれぬまま、雲雀は泣き叫ぶ獄寺の姿と、獄寺を犯す山本の姿を見守っていた。











【alioli】のけい様へ捧げます
2009.03.23