QUEENsample
*ツナ獄←雲雀の部分です
「まだ僕の質問に答えてないよ」
いったいどこに行くつもり?、僅かに首を傾けながら雲雀は再び問いかける。さらり、と艶やかな黒髪が揺れた。
「……お前には関係ない」
思わず足を止めてしまった獄寺にゆっくりと近づくと、雲雀はすっと瞳を細めて獄寺を見つめた。鋭く煌めく瞳の中、天頂に輝く月がゆらりと写りこんでいる。その瞳に全てを見透かされているような気持ちになり、獄寺は反射的に視線を逸らした。
「沢田」
「っ、」
さらりと口にされた名前に、獄寺は下げていた顔を上げ、そうして間近に迫った暗い瞳を認めて息を呑んだ。
「やっぱり」
雲雀はゆるりと楽しげに唇を歪ませた。
「沢田の所に行くんだ」
なにしにいくつもり?、そう問いかける雲雀の口元には依然笑みが浮かんでいたが、瞳に滲む残虐性を帯びた光は獄寺を捕えて離そうとはしない。凶暴ともいえる瞳から視線を反らせないまま、獄寺は乾いた唇を薄く開いた。
「決まってんだろ……仕事だ」
「こんな時間に?」
乾いた唇が紡いだ言葉は掠れていて、雲雀はふん、と鼻で笑って見せた。獄寺は唇を軽く舐めてから、言葉を続けた。
「時間なんて関係ねえ――いついかなる時も10代目の命に従うのが、右腕の務めだ」
「――へえ、」
獄寺の言葉に、雲雀は愉しそうに唇を歪ませるだけだった。その間も、雲雀の瞳は突き刺すような激しさで――しかしその瞳は意外なほどに澄み切っている――獄寺を見据えている。息苦しさに、獄寺はそっと雲雀から視線を背けた。
「もう行く」
小さくそう言ってから、獄寺はその場を去るべく雲雀に背を向け歩き出した。
「っ、!」
しかし次の瞬間、後ろから腕を掴まれたと思ったのと同時に、獄寺は壁に押し付けられていた。だん、と薄い背中が壁へと当たり大きな音を立てる。引き寄せられた際に掴まれた襟元は乱れ、小さなボタンがいくつか絨毯の敷き詰められた廊下に落ちる。背中への衝撃に小さく呻いていた獄寺は、至近距離で覗き込んでくる雲雀の瞳を認めて身を硬直させた。
「ふうん……」
さらり、と揺れた黒髪を月光が縁取る。闇にさえも侵されることのない漆黒の瞳が、ちらりと意味ありげに壁へ押さえつけられた獄寺の胸元へと向けられる。その視線の先にあるものを思い出し、獄寺は小さく息を呑んだ。
「これも、その“お務め”?」
月光が、獄寺の全てを照らし出していた。肌蹴たワイシャツの襟元から覗く獄寺の肌には、いくつもの赤い花が散っている。雲雀は獄寺の腕を壁へと押しつけたまま、笑みの形に歪んだ唇を獄寺の首元と寄せた。
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ツナ獄中心で、雲雀さんとか山本とかがちょろちょろ獄寺にちょっかい出してたりします。
ツナは笑っちゃうほど黒い、獄寺は「この人だれ?」な状態
雲雀さんと山本はひたすらに報われない