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トワイライトメロディ











 さらさらと風が流れ、窓を縁取る薄いカーテンがふわふわとたなびく。
 ふわふわとカーテンがたなびき、部屋に差し込む西日はきらきらと瞬いた。
 きらきらと瞬く西日の中、窓の桟に腰かける獄寺の足がゆらゆらと揺れる。
 獄寺、呼びかけても答えはなく、ゆらゆら、白い足が揺れるだけだった。
 「風邪、ひいちまうぞ?」
 服、着ろよ。
 言っても聞いてない――聴こえない――のはわかっていたから、床に投げ出されたシャツを拾って薄い肩に掛ける。誤って触れてしまった肌は作り物めいた冷たさと滑らかさで、あんまりにもまっさらであんまりにも綺麗だったから、抱きしめるしかなかった。そうすれば確かに脈打つ鼓動を感じられるから、酷く安心する。ほっと息を吐いた時、獄寺の手が、ゆるゆる、腹を撫でた。
 「なあ、」
 獄寺の手首を掴み、耳元に囁く。
 「……しよっか?」
 触れるだけの口づけひとつで獄寺を抱き上げ、ベッドに押し倒す。白いシーツに白い獄寺、見失わないよう必死で掻き抱いて、繋ぎとめるよう性急に自身を突き刺した。「あ、」と獄寺の口から洩れた声はきっと無意識で、それでもついさきほどまでも繋がっていたそこはあまりに優しくあたたかくオレを包みこんでくれるから哀しくなった。
 「……大丈夫?」
 問いかけて、それが何に対する言葉なのかわからなくなった。わからなくなってしまったまま獄寺の細い腰を掴んで突き上げる。あ、あ、と喘ぎのような呻きのような声を聞きながら、何度も何度も腰を突き上げる。行為になれ、オレになれた体はすいつくようで、とても気持ちよくてひどく悲しかった。悲しさを紛らわすように激しく獄寺を揺さぶり、気持ちよさの中におぼれてしまおうとした。
 獄寺が達するのと同時に、獄寺の中で熱を吐き出す。勢いを失った自身を獄寺の中からひきぬこうとしたけれど、腰を囲うようにしてからみついた獄寺の白い足がそれを許さなかった。はっとして、獄寺の足に手をかけかけたところで、「山本」ひどく穏やかな声で呼ばれた。オレは顔を上げた。そして、その細い腕が、ゆらりと揺らめくのを、みた。
 「……おめでと、」
 微笑んだ獄寺の手が、どこまでも白い腹を撫でる。
 ゆるゆる、と。
 おめでと、獄寺はもう一度そう言ってオレの手を取ると腹に導いて、その上に自分の手を重ねて再び腹を撫でる。
 ゆるゆる、と。
 眩暈がする。あるはずのない鼓動を掌に感じた気がして、しかし獄寺があまりに穏やかな表情をするからその手を振り払うことはできない。
 「おめでと、山本」
 「ありがと、……嬉しいよ」
 獄寺が笑う、オレも笑う、視線を合わせて唇を重ねて舌を絡める。
 もう、なんにも残っていないような気がした。
 細い身体に覆いかぶさるオレの視線の端で、獄寺の足が揺れていた。


 ゆらゆら、と。










2010.05.10