俺きっと、何度でも獄寺と恋に落ちるよ
唐突に、山本はそういった。 それはまだふたりで暮らし始めたばかりの頃で、深夜にふたりで寄り添ってテレビを観ていた時のことだった。観ていたのは題名もわからない映画で、山本がそんなことを言いだしたのだから、確か記憶を失った男女が再び巡り会い愛し合うといった内容のものだった気がする。 見つめてくる山本の目があまりに真剣で、ふとおかしくなった。思わず漏れた笑いに「本気なんだけど」と山本は少しだけ眉を寄せる。はいはい、と頷いて山本の髪をくしゃりと撫でてやると、その手を引かれて強く抱きしめられた。 「愛してる」 囁かれたありきたりで特別な愛の言葉に、ありったけの愛おしさを込めて「ばか」と囁き返す。山本は嬉しそうに笑ってオレの唇を塞いだ。 それはたわいない戯言で、それでもオレたちはそんなたわいないことを根拠もないのに信じていた。 |